- Profile
尾木直樹(尾木ママ) 教育評論家、法政大学教職課程センター長・教授、臨床教育研究所「虹」所長。
早稲田大学卒業後、私立高校、東京都公立中学校などで22年間ユニークで創造的な教育実践を展開。
現在も教壇に立つかたわら、子どもと教育、いじめ問題、メディア問題を中心に調査・研究、執筆・講演活動まで幅広く活躍する。
情報・バラエティ番組などにも多数出演し、「尾木ママ」の愛称で幼児からお年寄りにまで親しまれている。
- 2013-04-25
- 第3回 子どもに持たせたほうが良い物/持たせないほうが良い物
成長するにしたがって、子どもが欲しがるものも変化していきますね。親として、何を持たせた方がよいのか、持たせない方がよいものはあるのか、気になるところですね。今回はそんな悩みに尾木ママに答えていただきました。
- 子どもに持たせてはいけない物はありますか?
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「持たせてはいけない」というよりも、大事なのは、持たせた後の使い方なのよねぇ。また子どもの年齢によっても、どう考えるかだいぶ変わってきます。
例えば、「お金」。小学校の高学年にもなると、お金の管理を教えることが大事になってきますので、子どもにお小遣いをあげて自分で管理させることも必要ですね。
でも、もっと小さい子どもにはなるべくお金は持たせないほうが良いと思うわ。欲しいもの、必要なものがあったときに、子どもが自分の判断だけで買えるようにするのではなく、親に話したり相談して物事を進めながら教える方が、その年齢では大事よ。「お金」について学ぶことはとても大切ですから、子どもの成長をしっかり見ながら、どのタイミングで・どんな形で・どれだけ与えるかどうか、家庭で考えるといいですね。
あと、よく議論になる携帯やスマホは、「持たせないほうが良い物」ではなくて、持たせた後の使い方をきちんと教えてあげることが大事です。
海外でも携帯やスマホを持たせることに、いろいろな議論があるけれど、例えばシンガポールでは、子どもにスマホをすすんで持たせているのよ。ただし、持たせた上で、これをどう使うべきかを、学校や家庭できちんと教えることに力を入れているのね。物との付き合い方を早いうちに正しく教える、そういうことが子どもを守ることにつながる、という考え方なんです。
物だけを与えて放置しちゃうのが、子どもにとってはいちばん良くないですね。
- 物を与えるということは、親の責任を伴なうんですね。
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そう、物を与えるなら、親が使い方までを責任もってしっかり管理すること。これが大事ですね。
これはアメリカの話だけど、アメリカの親たちは子どもに携帯を持たせたら、それをどう使っているかをチェックするのが一般的なの。着信履歴やメールなんかもね。日本だとそれは子どものプライバシーの侵害だという意見も多いけど、その前にちょっと考えてみてほしいの。
まだ知識や経験の少ない子どもの手の中に、どんな社会とも繋がることのできる道具が常にあるんですよ。それはとても便利なことだけれど、親なら危険性も十分わかっているはず。その危険から子どもをどうしたら守れるかを考えたら、使い方を親が管理するのは、当然だしとても大事なことじゃないかしら。
単に持たせないのではなく、持たせたのなら、親がしっかり管理し、うまい使い手に育てる。与えた以上はそこまで責任を持つ!ということね。
- では、子どもに与えると良いのはどういうものでしょうか?
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ママスタのママ達のお子さんは、まだ小さな子が多いのよね。小さな子どもは遊びの中から様々な力をつけていくから、おもちゃって案外大事なの。でも○○式の知育教材とか、能力開発を謳った特殊なおもちゃでなくていいのよ。
僕は小さな子どもには、「木でできた積み木」をおススメしていますよ。シンプルな木の積み木で遊んで、木の硬さを手のひらで感じたり、いろいろな形を見てその組み合わせを考えることは、子どもの感性や脳の発達を促すの。積み木の数も、子どもの成長に合わせて、だんだん増やしてあげると良いわね。
あとは、楽器など音の出る物、粘土やクレヨンなんかは持たせると良いですね。自分で何かを表現するための道具ね。そういうもので遊ぶことで自然に表現する力が身について、感性が育っていくんですよ。
あと、持たせるとは違うけど、あるといいのが子どもの隠れ家(笑)。ちょっとした狭いスペースを、子どもがお絵かきしたりおもちゃを広げたり、自由に使えるようにしてあげるのはいいことですよ。胎内記憶、胎内願望っていうのがあるんだけど、お腹の中にいた時のような狭い空間にいると子どもは安心できるのよ。勉強も狭くて安心できるところほど集中できるものなんですよ。
- <尾木ママへの質問コーナー>
以前、家族の絆になる行動として、家族みんなでの登山を推奨されていましたが、その他にはどのようなことをするとよいでしょうか? -
手軽ではないけど、登山以外で面白いのは家族で旅をすることですね。普段一緒にいる家族でも、いつもと違う場所で改めてお互いを見ると、新しい気づきがたくさんあるの。この子はもうこんなことができるようになったとか、意外と冒険心があるとか、ね。子どもは子どもの目で親に対する新しい発見をしたり、知らない土地の人との触れ合いの中で社会性を学んでいくことができますよ。
もっと簡単なのは、家事を一緒にすること。
夕食を食べた後に、洗い物をママがスポンジで洗い、洗い流すのはお姉ちゃん、拭くのは弟、片付けはパパと言った感じで。もちろん全部ママ一人でできることだし、その方が早いかもしれないんだけど、あえてひとつの労働を家族全員で触れ合いながらやることで、達成感を共有できるのね。
ポイントは、親も子も同じ目線でフラットにってこと。同じ体験をして喜びも共有したいですね。
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尾木ママへのインタビューの中で、何度も出てきた「共有」という言葉。
とても印象に残っています。
子どもが何を見ているのか、同じ目線に立ってみることで、いろんな発見があるのかもしれませんね。
さて、次回のテーマは「子どもの心に共感しよう」です。
お楽しみに。
(取材・文:上原かほり 撮影:chiai 協力:臨床教育研究所「虹」)