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今井絵理子
Profile
今井絵理子 1983年生まれ。1996年にSPEEDのメンバーとしてデビュー。20歳で結婚、長男を出産。現在はSPEED、ソロと音楽活動、ライフワークとして全国の子どもたちと親御さんたちに笑顔を届けるイベントなどを実行している。
2015-06-05
第7回 息子の聴覚障がいを公表したのは、伝えたい人がいたからです

全8回でお届けしている、今井絵理子さんへのインタビュー。
第7回目となる今回は、日本テレビ『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』の中で、息子さんの聴覚障がいを公表したことについてのお話を伺っていきます。

2008年の日本テレビ『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』の中で、息子さんのことを公表した理由を教えてください。

公表のきっかけはママ友です。
私のように、息子の障がいを前向きに受け入れている人もいれば、もちろんそうじゃなくて、旦那さんのご両親にも伝えられていないというママ友もいたんです。
中には、お子さんの障がいを受け入れられずに、自殺を考えているお母さんにも出会いました。
そういうお母さん達との出会いの中で、私ができることを考えた時に、「あなただけじゃないよ。一人じゃないんだよ」ということを伝えたい!と思い、テレビで公表することを決めました。

実際に、息子さんが通っている学校で知り合ったお母さん達との中で生まれたきっかけだったんですね。

そうですね。
自分の子どもが障がいを持って産まれてきたら、親は「どうして私だけ?」、「どうして私の子が?」と、悩み続けてしまうんですよね。
そういう人達がいるのを知って、「そうじゃないよ。選ばれたんだよ」ということを伝えたかったんです。
そういう子を授かるというのは、大変さもあるけど、喜びも倍になるということを伝えたいと思ったんです。

実際にテレビで公表した後の反応はどうでしたか?

「母親の代表になってくれてありがとう」と言われました。
障がいというと、「暗い」、「閉鎖的」、「可哀想」というイメージを持たれる事が多いと思うんですけど、子ども達を見ているとそんな事を感じることはないんですよ。
ただ、みんなと違うのは耳が聞こえないという事だけ。
そういうことを伝えたかったんです。

その時の反響は、想像していた以上でしたか?

賛否両論あったんですけど、公表を決めた時に、それに対してのどんな反響があるのかということは想像しないようにしていました。「障がい」という言葉ってなんなんだろうと思うし、自分の中ではもう当たり前なんですけど、今まで自分の子が障がいということを言えなかったとか、自分自身が障がいを持っているということを言えなかったという人が、私のブログにたくさん来てくれたのは嬉しかったです。

こんな反応があるんだ!と思ったことはなんですか?

私のブログにたくさんの人が来てくれて、その中で、悩みを打ち明けてくれる人がたくさんいたことに驚きました。

公表後、今井さんの中で変化したことはありますか?

自分自身の気持ちですね。
息子のプライバシーを公表することに対しては悩みましたけど、彼が大人になった時に「ママが公表してくれたことで、こんなにいい世の中になったね。ありがとう」と言ってもらえるような母親になろうとは、公表する時に決めていたので、伝える使命、責任は感じて行動しています。

今井さんは、積極的に福祉活動をされているということですが、その活動について聞かせてください。

福祉活動は、何年か前からお仕事としてではなく、個人的活動としてやらせていただいています。
きっかけは、息子にいろいろな世界を知ってもらいたいなという思いからです。
知的障がい、自閉症の子がいる学校、普通の学校、児童養護施設、いろんな場所に、息子と一緒に行っています。
息子自身は聾学校に行っていますけど、違う障がいを持った子達との交流ができたらいいなと思って、全国を転々と回っているんです。
活動を始めた頃は息子も小さかったので行きやすかったのですが、今は学校があるので土日で行ける時に一緒に行っています。

聾学校での音楽活動について聞かせてください。

最初、聾学校で歌を歌うのはどうなのかなと思ったんですけど、歌わせてもらっています。
息子が生後半年の頃に、聴覚障がいを持った子の訓練の一つに、いろんな楽器を集めて、音を鳴らしていくというのがあって、振動が伝わったりするので息子がすごく楽しそうにしていたことがあったんです。
その時の息子を見て「私は歌を歌い続けてもいいのかな」とか「もう一度歌ってもいいのかな」と思うようになったんです。
もしかしたら、彼らにしか聞こえない音というのがあって、私が音楽を続けることでそれを聞かせてあげられたらいいなと、私の中での音楽への捉え方が変わったんですよ。
それで、まずは聾学校で音楽をやってみようと決めました。
最初は、すごく緊張しました。「おもしろくない」って反応だったらどうしようと。
ギターは本体に振動があるんです。カラオケを流してみんなでジャンプをしてみたりもできるし、空気から伝わる音を感じてくれたらいいなと思っています。
最近は、ダンスも教えています。低音があって一定のリズムがある音を大音量で流すと、やっぱり振動が伝わるんですよね。あとは、雰囲気とかが伝わるんです。

今井さんが息子さんの障がいをテレビで公表した理由を聞いて、胸が熱くなりました。同じ障がいを持つお子さんを持ったママ友達の気持ちを楽にしてあげられるためにと考えて行動ができる今井さんは、素晴らしい強さを持った女性ですね。
次回はとうとう最終回です。お楽しみに♪
(取材・文:上原かほり 撮影:chiai)

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